共産党と法輪功:衝突するアイデンティティ

共産党と法輪功:衝突するアイデンティティ   デービッド・マタス   (2017年7月5日、英国ブライトンでのInternational Academic Forumで発表された所見)   なぜ純粋で罪のない人々、法輪功の気功をする学習者が、中国国内で臓器のために殺されているのでしょうか。共産党と法輪功という二つのアイデンティティにこの悲劇をもたらした根本的な要因があるのです。我々が対応しているのはただの残虐主義ではなく、アイデンティティの衝突なのです。   この運命は法輪功学習者のせいでもあると示唆しているわけではありません。他の犠牲者と同様、法輪功学習者は無実なのですから。   法輪功の犠牲化を説明するには、加害者に焦点をあてる必要があります。犠牲化においてその犠牲者を責めることは、現実的でなく不条理なことです。加害者が、法輪功学習者を選んで犠牲化していることから加害者の本質を知ることが出来ます。   犠牲者を理解するためには、その脆弱性を知ることが重要です。法輪功は脆弱なため、中国共産党の最も邪悪な要素の標的になりやすいのです。   ここでは、中国共産党というアイデンティティの様々な側面を通して、共産党がいかに法輪功の弱みにつけこんでいるかを示していきます。私が焦点をあてる側面とは、信仰への不寛容、管理への執念、モダニズム、物質至上主義、残虐行為、機密性、プロパガンダ、不安、忠誠心の強要、道具化です。   信仰への寛容の欠如   宗教を見下すことは党文化の要素の一つです。共産主義者は無神論者です。しかしそれ以上に、共産党は信仰心のある人を愚か者だと軽蔑します。カール・マルクスは「宗教は大衆の麻薬」としています。   共産党の教義では、宗教とは「迫害者が抑圧者に課す苦痛をやわらげる目的で投薬される麻薬である」としています。宗教、つまり来世における幸福への信念を通して、抑圧された人々は現世における苦しみから癒されるという意味です。   理想的に機能している共産主義社会に宗教は存在しません。共産主義とは経済的抑圧を取り除くことが目的です。その苦痛を忘れるためのアヘンは不要なのです。共産主義社会での宗教の存在は、共産主義の失敗を受け入れたことを意味するのです。   アヘンは何もないところから現れるわけではなく、密売者が、アヘンを求め続ける中毒者を生み出し、完全に掌握する目的で売られます。宗教に対しても共産党はこのように分析しています。   中国共産党の法輪功に対するプロパガンダの一部は法輪功創始者の李洪志氏に対する激しい非難です。共産党は李氏を「人々をペテンにかけ…致死的な」ことに従事する「カルトの教祖」であり、自身を「神」と崇めさせるとしています。李氏は悪質に人々を誤導し、中国国内でトラブルを起こすよう外国人(おそらく私も含まれるのでしょう)をけしかけているというのが共産党の見解です。   当然のことながら、法輪功学習者はこれらの非難を心外と受け止めます。しかし、法輪功の非難ではありますが、個人攻撃ではないのです。多様な宗教に対する共産党の日常的なプロパガンダであり、精神性全般に対する共産党の典型的な立場と言えましょう。   共産主義は精神性を全く理解せず、単に物質的な価値でとらえます。つまり、共産主義者の目には、精神性の指導者が尊敬され崇められていると映ります。騙されていると思います。敬意を払わせるものを一切理解せず、宗教指導者が信者を何らかの形でペテンにかけ敬意を払わせていると見るのです。   管理支配への根深い執念   共産党文化の二つ目の要素は管理への執念です。どの政党も権力は望みます。でなければ政党として成立しませんから。   しかし共産党のこの「管理支配」への執念は度を越えています。中国憲法からうかがい知ることができます。   中国憲法の序文では「毛沢東首席を指導者とする中国共産党が率いるあらゆる国籍の中国人民」そして「中国共産党及びマルクス・レーニン主義、毛沢東思想の指導のもとのあらゆる国籍の中国人民」「中国共産党の指導のもと、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論および重要な三つの代表の思想」が言及されています。「三つの代表」とはこれまでの中国共産党指導者と江沢民国家主席が書いた党規約の名称です。   さらに、序文は「中国共産党の指導により幅広く統一された愛国心の前線」を加え、「中国共産党の指導下における多党政党制度と政治協議は…」と続きます。   読み手が忘れることのないように、中国憲法は「中国共産党の指導」を五回も繰り返しています。見逃すことは不可能です。   この指導権は単に助言や模範を示すものではありません。中国が独裁国家であることは憲法で定められています。   中国憲法の序文で「労働者と農民の同盟を基盤とする労働者階級が率いる人民民主主義独裁(つまりプロレタリアによる独裁)の国家が結成され発展した」とも記されています。加えて、「あらゆる国籍の中国人民は、人民の民主的な独裁政権に今後も従うものとする」とも加えられています。   憲法第1条:「中華人民共和国は労働者階級が領導し、労農同盟を基礎とする人民民主独裁の社会主義国家である」、憲法第3条:「中華人民共和国の国家機構は、民主中央政権制の原則を実行する」と記されているのです。   中国憲法は中国が独裁国家である旨を3度主張し、その中核となる規則を強調するために別の言い方でも表現しています。中国の独裁政権は、邪悪な支配者の気まぐれではなく、法体制なのです。   中国憲法は宗教の自由を含んだ人権の文言をいくつも明記しています。しかし、法的文書は、全体として理解しなければなりません。中国憲法に記載されている「宗教の自由」の保障は制限付で説明されており、中国共産党の独裁政権が指導する下での「宗教の自由」がその中核にあります。…